Kyokushin Kaikan
TABATA DOJO
「黒帯までの道」
佐藤琢磨(藤島)
「ガードを下げるな!手の位置考えろ!」
必ず先生に言われる。「ああ、またやってしまった。」
ぼくは反省し、すぐにかまえる。もう言われないぞ。
ぼくは、小さいころ弱虫で泣き虫だった。ようち園で友だちとけんかしても、すぐに負ける。物を運ぶときも、持つときも力が弱くて、すぐにへとへとになる。そんな自分がいやだった。強くなりたい。ぼくの中で、そんな気持ちがぐんぐん大きくなっていった。
「空手をやってみないか。」
毎日泣いているぼくを見た父が、こう言った。ぼくは、はじめは空手なんてあまり興味がなかった。実際に見たことがないし聞いたこともない。「空手かあ・・・。」ちょっと試しに見に行ってみようか。これが、ぼくの空手との出合いだった。
体育館にひびきわたるかけ声。伝わってくる熱気。
「すごい……。」
ぼくは、思わず息を飲みこんだ。大きな男の人がけったり、つきをしたり。動きがピシッ、ピシッと音を立てて決まる。かっこいい!ぼくも、こういう技をしたい!こんな人になりたい!ぼくの胸がドキドキと音を立てた。ぼくは、すぐに弟といっしょに入会を決めた。
初めての練習。今日からすぐに技を覚えられる。ぼくは、うれしくて仕方がなかった。しかし、そこに待っていたのは、想像とははるかにちがう練習だった。やることといえば、基本の動きだけ。技なんてまだまだ先の話だ。こんなつまらない練習、いつまでやるのだろう。こんなの空手じゃない。ぼくは先ぱいと同じ練習をしたくてたまらなかった。そのことを先生に言うと、
「いきなり組んだらあぶない。基本が大事なんだぞ。」と、言われた。何も知らずにいた自分が、少しはずかしかった。
そして、やっと相手と組める日が来た。ぼくは、待ってましたとばかりに、かかっていった。「必ずたおす!決めてやる!」そして、ぼくのけりが、相手に強く当たった。
「何やってるんだ!今は、弱くやる練習だぞ!」
いきなり先生に叱られてしまった。ぼくは、はりきりすぎて、必要以上に力を入れてしまった。落ち着いてやらなきゃ。ぼくは反省した。
そして、県大会の日。ぼくは、準決勝まで勝ち進んだ。ここまで来たら、負けられない。
「はじめ!」
ぼくは、相手の動きをよく見た。そして、一しゅんのすきをねらった。今だ!
「一本!」
ぼくのつきが見事に決まった。ぼくは、うれしくて心の中で「よっしゃあ!」とさけんだ。ふと見ると、相手が泣いていた。「痛かったのかなあ……。悪いことしたかな。」ぼくは、ちょっととまどったけど、「いや、真剣勝負なんだから、これでいいんだ。」と胸をはってもどった。
そして、いよいよ決勝戦。ここまで勝ち進んだのは初めてだ。家族も応えんに来ている。絶対に優勝したいという気持ちでいっぱいだった。きんちょうなんか、どこかへ飛んでいった。
「はじめ!」
さすがに、相手は強い。動きも速い。なかなか技が決められず、タイムリミットが近づいてきた。
「はぁ、はぁ。」
少し呼吸を整えたそのしゅん間、ぼくは何が起きたのか分からなくなった。相手のまわしげりを見事にくらっていたのだ。
「技あり!」
相手のガッツポーズとうれしそうな顔が見えた。同時に相手の応えん団の「わあっ。」という歓声と、ぼくの応えん団の「ああ……。」という残念そうな声が聞こえた。完全なスタミナ切れ。完敗だった。ヘッドギアをつけていたから、痛みはほとんどない。それなのに、目の周りが熱くなって、自然と涙がこぼれてしまった。そうか、さっきの準決勝の相手も、痛かったわけじゃないんだ。くやしかったんだ。真けんにがんばったからこそ流れた涙だったんだな。「強さ」というものは、手足の力がどれだけあるかで決まるものではない。つらいことや、くやしいことに負けずに、次への目標にすることが大切なのだ。そして、続けていくことも強さだ。また、相手をやっつけるのが空手ではない。相手の努力やがんばりを認め、尊重し合うことが大事なのだ。ぼくは、これからも空手を続けていく。今はまだ茶色の帯だけど、いつか黒帯になれることを信じて。
第25回くらしの文集(田川編)
平成20年2月発行
極真会館 田畑道場
山形市元木1-3-13
023(625)0900